犬・猫では稀な疾患、むしばについて説明します。
ヒトでよく発生するう蝕(むしば)について説明します。
う蝕とは口腔内の菌が歯垢中の炭水化物を発酵させて酸を産生することで歯の硬組織を腐食する疾患のことです。
ヒトと異なり犬での発生は稀で、猫では認められていません。
犬猫では稀である理由としては犬では食事中の炭水化物が少ない、唾液がアルカリ性のため菌が発育しにくい、唾液中にアミラーゼが少ない、犬の歯は尖っているため、菌がとどまる部位がないことなどが考えられています。犬の上顎の後ろの方の歯はヒトと同じ形をしているため、その部位で発生することが多いです。
ヒトと同様、う蝕に罹患すると非常に強い痛みを伴い、ごはんが食べられなくなります。
診断は視診と触診とレントゲン検査です。
初期では、表面が乾燥しているときにマットな白色の歯として認められます。また、進行した病変では歯の欠損や黒く変色した病変が確認できたり、レントゲンで歯が溶けていたり、歯の根っこに病変が認められるようになります。そのため全身麻酔下にて照明やエアブロー、レントゲン装置を用いて、発生しやすい部位を中心に歯の欠損や黒く変色した病変等がないかどうかを確認します。また、しばしば左右対称性に認められるため、口腔内全体をしっかり観察する必要があります。う蝕に罹患した歯はう蝕検出液に染まるため、それらを用いてことにより容易に診断することもできます。
治療には歯内治療や抜歯が必要です。
現在獣医領域で行われている治療は病変を全て削り取り(神経が腐っていたら神経も抜く)、修復することです。病変が進行している場合は抜歯が必要となります。
もし、口を痛がってごはんを食べないなどの症状があれば、う蝕かもしれないので一度歯科専門の病院を受診することをおすすめします。

