ノミ・ダニが原因?ペットの皮膚病:症状と正しい駆除・予防法
「うちの子、最近よく体を掻いているな」「なんだかフケが多い気がする…」 もしかしたら、そのかゆみや皮膚トラブルの原因は小さな敵、ノミやダニかもしれません。
ノミやダニは、ペットの皮膚に寄生して様々な問題を引き起こす、非常に身近な外部寄生虫です。単なるかゆみだけでなく、アレルギー反応を引き起こしたり、他の病気を媒介したりすることもあります。特に暖かい季節は活動が活発になりますが、室内飼育が中心の現代では、冬でも油断はできません。
ここでは、ペットの皮膚病の原因となる主なノミ・ダニの種類、それらが引き起こす症状、そして最も重要な正しい駆除・予防法について、獣医師が解説します。
ペットに寄生する主なノミ・ダニ
皮膚病の原因となりやすい代表的な外部寄生虫には、以下のようなものがいます。
ノミ
- 非常にすばしっこく、体長1〜3mm程度の昆虫です。
- ペットの血を吸うだけでなく、その唾液がアレルギーの原因となり、「ノミアレルギー性皮膚炎」を引き起こすことがあります。これは非常に強いかゆみを伴います。
- 瓜実条虫(サナダムシ)など、他の寄生虫を媒介することもあります。
ヒゼンダニ(疥癬)
- 非常に小さく、肉眼ではほとんど見えません。皮膚にトンネルを掘って寄生します。
- 激しいかゆみを引き起こす「疥癬(かいせん)」という皮膚病の原因となります。
- 人にもうつることがあります(通常、人では一時的な症状で、寄生は継続しません)。
ニキビダニ(毛包虫、アカラス)
- 毛穴の中に寄生するダニです。健康な犬猫にも少数寄生していますが、通常は問題を起こしません。
- 子犬や子猫、免疫力が低下している場合に異常増殖し、「ニキビダニ症(毛包虫症)」という皮膚病を発症することがあります。
ノミ・ダニ寄生による皮膚病の症状
ノミやダニが寄生すると、以下のような症状が見られることがあります。
共通する症状
- 体を掻く、舐める、噛む
- 皮膚の赤み
- 脱毛
- フケ、かさぶた
- 落ち着きがなくなる
ノミ寄生の特徴
- 腰から尾の付け根にかけて、脱毛や皮膚炎が見られることが多い(ノミアレルギー性皮膚炎)。
- 毛の間を探すと、ノミ本体や、黒い砂粒のような「ノミの糞」が見つかることがあります(濡れたティッシュに乗せると赤くにじむ)。
ヒゼンダニ(疥癬)の特徴
- 耳の縁、肘、かかと、お腹などに、フケや厚いかさぶたを伴う皮膚炎が見られます。
- とにかく激しいかゆみが特徴です 。
ニキビダニ症の特徴
- 目の周り、口の周り、足先などから脱毛が始まることが多いです。
- かゆみは、ない場合から強い場合まで様々です。
- 細菌の二次感染(膿皮症)を併発することがあります。
診断:どうやって見つけるの?
動物病院では、以下のような方法でノミ・ダニの寄生を診断します。
- 視診: 毛をかき分けて皮膚をよく観察し、ノミやノミの糞、特徴的な皮膚病変がないかを確認します 。
- 皮膚掻爬検査(ひふそうはけんさ): 皮膚の表面を鋭匙などで引っ掻いて角質や毛を採取し、顕微鏡でダニ(ヒゼンダニやニキビダニ)がいないかを確認します 。
- 毛検査: 抜いた毛を顕微鏡で観察し、ニキビダニなどが付着していないか調べます。
- 試験的な治療: 寄生虫の検出が難しく、症状から寄生が強く疑われる場合は、駆除薬を投与して症状が改善するかどうかを見る「試験的治療」を行うこともあります。
最重要!正しい駆除と予防法
ノミやダニによる皮膚病は、適切な駆除と、何よりも定期的な予防によって防ぐことが可能です。
- 駆除・予防薬の使用
- 動物病院で処方される薬を: 獣医師が処方する駆除・予防薬は、安全性と効果が確認されており、ペットの種類、年齢、体重、健康状態に合わせて適切なものが選ばれます。
- 様々なタイプ: 皮膚に滴下するスポットオンタイプ、おやつ感覚で食べられる経口タイプなど、様々な形状の薬があります。ライフスタイルやペットの好みに合わせて選ぶことができます。
- 市販薬のリスク: ペットショップやホームセンターなどで販売されている市販薬の中には、効果が不十分なものや、猫に使用すると中毒を起こす成分が含まれているもの(特に犬用を猫に使うのは危険)があります。自己判断での使用は避け、必ず獣医師に相談しましょう。
- 定期的な投与の徹底
- 毎月(または指示通り)継続: 多くの駆除・予防薬の効果は1ヶ月程度です。効果を持続させ、寄生を確実に防ぐためには、毎月(あるいは製品の指示に従った間隔で)忘れずに投与することが非常に重要です。
- 年間を通じた予防: ノミは冬でも室内で活動できます。特にノミは一度家の中に持ち込まれると、カーペットや家具の隙間などで繁殖し、根絶が難しくなります。「暖かい時期だけ」ではなく、年間を通じた予防を強く推奨します。
- 環境整備
- ノミ対策: ノミはペットの体表だけでなく、環境中(床、カーペット、ソファ、ペットの寝床など)にも卵や幼虫、さなぎの形で潜んでいます 。掃除機をこまめにかけ、ペットの寝床や敷物は定期的に洗濯・熱乾燥するなど、環境を清潔に保つことも重要です。
- 多頭飼育の注意点: ノミや疥癬が見つかった、あるいは疑わしい
- 複数のペットを飼育している場合は、症状の有無にかかわらず、同居している全ての犬・猫に同時に駆除・予防を行う必要があります。
まとめ
たかがノミ・ダニと侮ってはいけません。激しいかゆみはペットに大きなストレスを与え、皮膚を掻き壊すことで二次的な細菌感染などを引き起こす可能性もあります。また、ノミアレルギーのように、一度発症すると厄介な病気の原因にもなります。
愛犬・愛猫にかゆみや脱毛などの皮膚症状が見られた場合は、自己判断せずに、まずは動物病院にご相談ください。ノミ・ダニが原因かどうかを正確に診断し、適切な治療法をご提案します。
そして何よりも、「予防は治療に勝る」です。
動物病院で処方される安全で効果的な予防薬を、定期的に、年間を通じて使用することが、愛するペットをノミ・ダニの脅威から守るための最も確実な方法です。予防について、ご不明な点があればいつでもお気軽にご相談ください。