ペットの毛が抜ける・薄い:脱毛の原因(病気・ストレス)と対策

「最近、なんだか愛犬の毛が薄くなってきた気がする」「ブラッシングすると、ごっそり毛が抜ける」「愛猫の体にハゲができてしまった」… ペットの毛が抜けたり、薄くなったりする「脱毛」は、飼い主様にとって非常に気になるサインです。

単なる換毛期(毛の生え替わり)であれば心配いりませんが、部分的に毛がなくなったり、地肌が見えるほど薄くなったり、かゆみや赤みなどの皮膚症状を伴ったりする場合は、何らかの病気やトラブルが隠れている可能性があります。

ここでは、犬や猫に見られる脱毛の主な原因と、動物病院での診断、そして原因に応じた対策について解説します。

脱毛のサインとチェックポイント

まず、ペットの脱毛に気づいたら、以下の点をチェックしてみましょう。診断の手がかりになります。

  • 脱毛の範囲: 体の一部だけか、左右対称か、全身に広がっているか?
  • かゆみの有無: 体を掻いたり、舐めたり、噛んだりしていないか?
  • 皮膚の状態: 脱毛部分の皮膚は赤いか、フケやかさぶたはないか、ベタついていないか、臭いはあるか?
  • いつから始まったか: 急に始まったか、徐々に進行しているか?
  • 他に症状はないか: 元気や食欲の変化、飲水量の変化、体重の変化などはないか?

ペットの脱毛、考えられる原因は?

脱毛の原因は多岐にわたります。大きく「かゆみを伴う脱毛」と「かゆみを伴わない脱毛」に分けて考えると分かりやすいでしょう。

1. かゆみを伴う脱毛

ペットが体を掻いたり、舐めたり、噛んだりすることで毛が抜けてしまうケースです。

  • アレルギー性皮膚炎(アトピー、食物アレルギー、ノミアレルギーなど): アレルギー反応による強いかゆみのため、掻き壊したり、過剰にグルーミングしたりすることで毛が抜けます。
  • 外部寄生虫(ノミ、ヒゼンダニなど): 寄生虫による刺激やかゆみで、引っ掻いたり噛んだりして脱毛します。
  • 皮膚感染症(膿皮症、マラセチア皮膚炎、皮膚糸状菌症など): 細菌や真菌が皮膚で増殖し、炎症を起こして毛が抜けたり、かゆみから掻き壊して脱毛します。

2. かゆみを伴わない脱毛

ペット自身がかゆがっている様子はないのに、毛が薄くなったり抜けたりするケースです。

  • 内分泌(ホルモン)疾患: 
    • 甲状腺機能低下症(犬に多い): 元気消失、体重増加、寒がるなどの症状と共に、左右対称性の脱毛が見られることがあります。
    • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群、犬に多い): 多飲多尿、お腹が膨れるなどの症状と共に、左右対称性の脱毛、皮膚が薄くなるなどの変化が見られることがあります。
    • 性ホルモン異常: 未避妊・未去勢の動物で見られることがあります。
  • 毛周期の異常: 
    • 毛周期停止(アロペシアXなど): ポメラニアンやシベリアンハスキーなどの特定の犬種で見られる、原因不明の脱毛症です。体幹部に対称性の脱毛が見られますが、かゆみはありません。
  • 栄養障害: 栄養バランスの偏りや、特定の栄養素の不足・吸収不良などが脱毛の原因となることがあります。
  • ストレス・心因性: 環境の変化や不安など、強いストレスによって過剰なグルーミングを行い、毛を舐め壊して脱毛することがあります(特に猫)。
  • 先天性・遺伝性: 生まれつき毛が少ない、あるいは特定の部位の毛が生えないといったケースもあります。
  • 薬剤性: 特定の薬剤(ステロイド剤の長期投与など)の副作用として脱毛が起こることがあります。
  • その他: 腫瘍(皮膚腫瘍や内臓腫瘍)や自己免疫疾患などが原因となることもあります。

動物病院での診断:原因を特定するために

脱毛の原因を正確に特定するためには、獣医師による診察と検査が必要です。

  1. 問診: 上記のチェックポイントに加え、普段の生活習慣、食事、予防歴、病歴などを詳しく伺います。
  2. 身体検査・視診: 全身状態の確認と共に、脱毛のパターン(範囲、対称性など)、皮膚の状態(色、厚さ、フケ、赤みなど)、かゆみの有無などを詳しく観察します。
  3. 皮膚科学的検査: 
    • 抜毛検査(トリコグラム): 毛を数本抜き、毛根や毛幹の状態を顕微鏡で観察します。毛周期の状態や、寄生虫・真菌の有無などを調べます。
    • 皮膚掻爬検査: 皮膚表面をわずかに削り取り、ダニなどの寄生虫がいないか確認します。
    • スタンプ検査: 皮膚表面に細菌やマラセチアの感染がないか顕微鏡で調べます。
    • 真菌培養検査: 皮膚糸状菌症が疑われる場合に行います。
  4. 血液検査・ホルモン検査: 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など)が疑われる場合に、ホルモン濃度などを測定します。全身状態の把握にも役立ちます。
  5. 皮膚生検: 診断が難しい場合や腫瘍などが疑われる場合に、皮膚組織の一部を採取し、病理検査を行います。確定診断に繋がる重要な検査です。

これらの検査結果を総合的に判断し、脱毛の原因を特定していきます。

脱毛への対策:原因に応じた治療とケア

脱毛の治療や対策は、その原因によって全く異なります。

  • アレルギー: 原因アレルゲンの特定と回避(除去食、環境整備など)、かゆみを抑える薬、スキンケア(薬用シャンプー、保湿)などを行います。
  • 外部寄生虫: 適切な駆虫薬で寄生虫を駆除します。定期的な予防も重要です。
  • 皮膚感染症: 抗菌薬や抗真菌薬(内服、外用、薬用シャンプー)で原因菌を治療します。基礎疾患があれば、その治療も並行して行います。
  • 内分泌疾患: 原因となっているホルモン異常を是正するための治療(ホルモン補充療法など)を行います。通常生涯にわたる投薬が必要です。
  • 栄養障害: 食事内容を見直し、栄養バランスの取れた食事を与えます。必要に応じて療法食やサプリメントを使用します。
  • ストレス・心因性: ストレスの原因を特定し、可能な限り取り除くよう環境を改善します。行動療法や精神安定剤が必要な場合もあります。
  • 毛周期停止など原因不明の場合: 確立された治療法はありませんが、毛の成長をサポートするサプリメントなどが試されることがあります。

まとめ:脱毛に気づいたら、早めに動物病院へ

ペットの脱毛は、単なる見た目の問題だけでなく、様々な病気のサインである可能性があります。特に、かゆみや皮膚の赤みなどを伴う場合や、脱毛範囲が広がっている場合、元気がないなどの他の症状が見られる場合は注意が必要です。

「換毛期かな?」「そのうち生えてくるだろう」と自己判断せず、脱毛に気づいたら早めに動物病院を受診し、原因を正確に診断してもらうことが大切です。原因に応じた適切な治療やケアを行うことで、症状の改善や、背景にある病気の早期発見・治療に繋がります。

当院では、皮膚科診療の経験豊富な獣医師が、丁寧な診察と必要な検査を通じて脱毛の原因を特定し、最適な治療・ケアプランをご提案いたします。ペットの毛に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。

Monthly 月間アーカイブ

Related article 関連記事

© 2024 クッキー動物病院
Web予約Web問診