ワンちゃんの潜在精巣(停留精巣)手術に「腹腔鏡」を選ぶメリットとは?
潜在精巣とは
ワンちゃんの潜在精巣(停留精巣)は、精巣が陰嚢に降りずにお腹の中や鼠径部(太ももからペニスの横)に留まってしまう状態です。
特に腹腔内に精巣が停留している場合、腫瘍の発生率が正常な位置にある精巣と比べて約10倍にもなると言われています。
そのため、片側・両側、精巣の大きさや発達の程度にかかわらず、摘出手術が強く推奨されます 。
この摘出手術の方法として、近年注目されているのが腹腔鏡手術です。
診断方法
通常は身体検査で発見されることが多いです。
陰嚢部分を触診し、片方、もしくは両方の精巣が降りてきているかどうかを確認します。
状況によっては超音波検査で精巣の位置(鼠径部、腹部)を確認することもあります。
治療
潜在精巣を内科的に治療することはできません。
治療には潜在精巣になっている精巣の切除手術を行う必要があります。
手術の方式は鼠径部と呼ばれるペニスの横の皮下であれば直上の切開になります。
腹部であれば開腹手術でお腹の中にとどまってしまっている精巣を切除します。その際、一般的な開腹手術と腹腔鏡手術の選択がでてきます。
腹腔鏡手術の大きなメリット
潜在精巣の摘出に腹腔鏡を選ぶことには、飼い主様にとって大きな安心とメリットがあります 。
1. 体への負担が少ない「低侵襲性」
腹腔鏡手術は、従来の開腹手術と比べて侵襲性(体への負担)が低いことが最大のメリットです 。小さな切開で済むため、術後の回復が早く、ワンちゃんの痛みも軽減される傾向にあります。
2. 精巣の正確な「探索」と「摘出」
腹腔内の潜在精巣は、超音波検査などでも見つからないことがあります。腹腔鏡を用いることで、お腹の中を直接、詳細な映像で確認できるため、精巣やその関連構造(精管、精巣静脈など)を正確に探索し、見つけた場合は確実な摘出へと繋げることができます 。
3. 臓器の位置関係の把握
腹腔内の精巣周辺の臓器や血管(精巣静脈など)の位置関係を詳細に把握しながら手術を進められるため、より安全な手術に繋がります 。
4. 飼い主様の「安心感」
腹腔鏡手術は、多くの飼い主様にとって安心感があります。また、術中に撮影された映像などを見て、ご家族にも手術内容や精巣の状態を理解していただきやすいです。

腹腔鏡で観察された潜在精巣
デメリット
コストについて
腹腔鏡手術は、専用の機器を使用するため、従来の開腹手術に比べてコスト(費用)が高くなる傾向があります 。しかし、早期の回復や身体への負担の少なさを考慮すると、検討する価値のある選択肢ではないでしょうか?
まとめ
潜在精巣の手術は、ワンちゃんの将来的な健康を守るために非常に重要です。
腹部にとどまっている潜在精巣であれば腹腔鏡手術で負担を少なく手術してあげることが可能です。ご不明な点があれば、お気軽に獣医師にご相談ください。
