猫アトピー症候群(食物/環境):症状の見分け方と治療・食事管理

「最近、愛猫が体を痒がっている」「皮膚にブツブツができている」「毛が抜けてきた」… もしかしたら、それは猫アトピー症候群のサインかもしれません。猫アトピー症候群は、かゆみや様々な皮膚症状、消化器症状(下痢や嘔吐など)、呼吸器症状(喘息)を引き起こし、猫自身にとっても、見守る飼い主様にとっても辛い病気です。

ここでは皮膚に症状がみられる「猫食物アレルギー」と「環境アレルギー(猫アトピー性皮膚症候群)」のそれぞれの症状の特徴、見分け方(診断)、そして治療法や大切な食事管理について、獣医師が解説します。

 

猫アトピー症候群の皮膚症状:こんなサインに注意!

 

猫アトピー症候群の皮膚症状は、特徴的なパターンで現れることがあります。主な症状は「かゆみ」ですが、それに伴い以下のような皮膚の変化が見られます 。   

 

強いかゆみ

体をしきりに舐める、掻く、噛むなどの行動が見られます。特に顔面、頭部、首周り、耳、腹部、四肢、背中などに症状が出やすい傾向があります。

 

粟粒性皮膚炎(ぞくりゅうせいひふえん)

粟粒(あわつぶ)のような小さな赤いブツブツ(丘疹)がたくさんできます 。触るとザラザラした感触があります。  

 

好酸球性肉芽腫群(こうさんきゅうせいにくげしゅぐん)

特徴的な皮膚症状の総称です。

 

  • 好酸球性プラーク: 主にお腹や内股に、赤く盛り上がった、じゅくじゅくした病変ができます。強いかゆみを伴います。
  • 好酸球性肉芽腫: 口の中(舌や口蓋)、あご、後肢の皮膚が厚くなり潰瘍ができることがあります。かゆみはないこともあります。
  • 無痛性潰瘍(むつうせいかいよう): 主に上口唇に、えぐれたような潰瘍ができます。通常、痛みやかゆみはありません。

  

脱毛

過剰なグルーミング(毛づくろい)によって、毛が対称性に薄くなったり、抜けたりします。特にお腹や脇、太ももの内側などに見られます。

 

頭部や首のかゆみ・皮膚炎

掻き壊しによる傷、かさぶた、赤みなどが頭部や首周りに集中して見られることもあります。

 

外耳炎

約20%の猫が外耳炎を併発しているとされています 。   

 

これらの症状は、食物アレルギーでも環境アレルギーでも見られる可能性があり、症状だけで原因を特定するのは困難です。

 

原因の見分け方:食物?それとも環境?(診断)

 

猫アトピー症候群の診断は、他の皮膚病(寄生虫、感染症など)を除外した上で、アレルギーの原因を探っていくプロセスが重要です。

 

詳細な問診と皮膚検査

いつから、どこに、どのような症状が出ているか、食事内容、生活環境、ノミ・ダニ予防の状況などを詳しくお伺いします。皮膚の状態を観察し、必要に応じて皮膚表面の検査(寄生虫、細菌、真菌、マラセチアのチェック)を行います 。   

 

ノミ・ダニ予防の徹底

ノミアレルギー性皮膚炎は非常によく見られるため、まずは適切なノミ・ダニ予防薬を定期的に使用し、ノミの寄生が原因でないことを確認します 。   

 

除去食試験(食物アレルギーの診断)

食物アレルギーが疑われる場合、最も信頼性の高い診断法が「除去食試験」です 。これは、獣医師の指導のもと、これまで食べたことのないタンパク質や炭水化物で作られた特別な療法食、または加水分解食(アレルギー反応を起こしにくいようタンパク質を細かく分解したフード)のみを、8週間程度厳密に与える試験です。この期間中に皮膚症状が改善し、その後、元の食事に戻して症状が再発すれば、食物アレルギーと診断できます。   

 

環境アレルギー(猫アトピー性皮膚症候群)の診断

上記のステップでノミ・ダニ予防を徹底し、除去食試験を行っても症状が改善しない、あるいは部分的な改善にとどまる場合、環境中のアレルゲン(ハウスダストマイト、花粉、カビなど)に対するアレルギーの可能性が高まります。  

 

食物アレルギーと環境アレルギーは併発しているケースも少なくありません。正確な診断のためには、獣医師による診察と、根気強い検査・試験が必要です。

 

猫アトピー症候群の治療と管理

 

原因に応じて適切な治療と管理を行うことで、症状をコントロールし、猫のQOL(生活の質)を改善することができます。

 

食物アレルギーの場合

食事管理: 除去食試験で特定された原因食物を生涯にわたって完全に避けることが最も重要です。  

環境アレルギー(猫アトピー性皮膚症候群)の場合

かゆみと炎症の管理: ステロイド、免疫抑制剤、抗ヒスタミン薬、分子標的薬(犬用が猫に応用される場合もあります)などを、症状や猫の状態に合わせて適切に使用し、かゆみと炎症をコントロールします 。長期的な投薬が必要な場合が多く、副作用に注意しながら量を調整していきます。   

 

免疫療法

原因アレルゲンが特定できれば、犬と同様に免疫療法が選択肢となる場合もありますが、猫での有効性は犬ほど確立されていません 。   

 

共通のケア

  • ノミ・ダニ予防: 原因に関わらず、ノミアレルギーの併発を防ぐために、年間を通じた定期的なノミ・ダニ予防は必須です。   
  • 二次感染の治療: 皮膚を掻き壊すことで細菌やマラセチアが増殖している場合は、これらに対する治療が必要です。   
  • 定期的な診察: アレルギー性皮膚炎は慢性的な管理が必要な病気です 。定期的に獣医師の診察を受け、皮膚の状態に合わせて治療法を調整していくことが重要です。 

 

まとめ

猫アトピー症候群は、見た目の症状が似ていても、原因や適切な対処法は異なります。愛猫にかゆみや皮膚の異常が見られたら、自己判断せずに、まずは動物病院にご相談ください。

 

当院では、丁寧な問診と必要な検査を通じて原因を特定し、それぞれの猫に最適な治療プランとケア方法をご提案します。特に診断が難しいとされる猫の皮膚病について、経験豊富な獣医師が飼い主様と協力しながら、症状の改善と長期的な管理を目指します。「なかなか治らない」「どうケアしたら良いか分からない」といったお悩みにも、親身に対応させていただきます。

 

まずはお気軽にお問い合わせいただき、ご予約の上ご来院ください。

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