食事が鍵?犬猫の皮膚トラブルと食事療法(アレルギー対応フード等)

「最近、愛犬・愛猫の皮膚のかゆみが治まらない…」 「フードを変えたら、なんだか毛艶が悪くなった気がする…」

私たち人間と同じように、犬や猫の健康も、毎日の食事が大きく影響しています。特に、皮膚や被毛の状態は、栄養バランスや特定の食べ物に対する反応が顕著に現れやすい部分です。しつこいかゆみや赤み、脱毛といった皮膚トラブルの背景に、実は「食事」が関わっているケースは少なくありません。

ここでは、犬猫の皮膚トラブルと食事の関係、特に「食物アレルギー」に焦点を当て、その診断法である「除去食試験」や、治療の柱となる「食事療法(アレルギー対応フードなど)」について、獣医師が解説します。

「食べるもの」が皮膚トラブルの原因になる?

皮膚トラブルの原因となる食事関連の問題には、主に以下の二つがあります。

食物アレルギー

特定の食べ物(多くはタンパク質)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態です。本来は無害なはずの食べ物を「異物」と認識し、攻撃してしまうことで、かゆみや皮膚炎などのアレルギー症状を引き起こします。牛肉、鶏肉、乳製品、卵、小麦、大豆などが原因となりやすいと言われていますが、どんな食材でもアレルゲンになる可能性があります。

食物不耐性

免疫反応とは関係なく、特定の食べ物をうまく消化・吸収できなかったり、食べ物に含まれる特定の物質に体が反応したりすることで、皮膚症状や消化器症状(下痢、嘔吐など)が現れる状態です。

これらの症状は、他の皮膚病(アトピー性皮膚炎、寄生虫、感染症など)と見分けがつきにくいことが多いため、正確な診断が重要になります。

食物アレルギーを特定する「除去食試験」

食物アレルギーが疑われる場合、現在最も信頼性の高い診断方法が**「除去食試験」**です。これは、アレルギーの原因となっている可能性のある食べ物を特定するために、獣医師の指導のもとで行う食事テストです。

  1. 特別なフードを与える: これまで食べたことのないタンパク質源(例:カンガルー、ダック、鹿肉など)や炭水化物源で作られた「新奇タンパク質食」、またはタンパク質をアレルギー反応が起こりにくいサイズまで細かく分解した「加水分解タンパク質食」といった特別な療法食のみを、一定期間(通常8週間程度)与えます。
  2. 厳密な食事管理: この期間中は、処方された療法食と水以外、絶対に何も与えてはいけません。おやつ、人の食べ物、味付きのデンタルケア製品、サプリメントなども全て中止します。家族全員の協力が不可欠です。
  3. 症状の変化を観察: 除去食試験中に皮膚のかゆみや赤みなどの症状が改善するかどうかを注意深く観察します。
  4. 食物負荷試験(チャレンジ): 症状が改善した場合、アレルギーの原因と疑われる元の食事や食材を少量与えてみて、症状が再び現れる(悪化する)かどうかを確認します。症状が再発すれば、その食べ物に対するアレルギーであると診断できます。

除去食試験は、正しい方法で根気強く行う必要があり、必ず獣医師の指導のもとで進めることが重要です。

皮膚のための食事療法:療法食の種類と役割

食事療法は、食物アレルギーの診断と治療だけでなく、皮膚全体の健康維持にも役立ちます。

 

アレルギー対応フード(除去食・新奇タンパク質食・加水分解タンパク質食)

目的

食物アレルギーの原因となる特定のタンパク質を除去し、アレルギー反応を抑えることを目的としています。除去食試験にも用いられます。

特徴

アレルギー反応を起こしにくいタンパク質源を使用したり、タンパク質を分解したりして作られています。獣医師の処方が必要です。

皮膚ケア用フード

目的

食物アレルギーが直接の原因ではない場合でも、皮膚のバリア機能を強化したり、炎症を抑えたりする栄養素を補給することで、皮膚の健康維持をサポートします。アトピー性皮膚炎などの管理にも用いられることがあります。

特徴

皮膚の健康に良いとされるオメガ3・6脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどがバランス良く強化されています。

食事療法を行う上での注意点

食事療法は皮膚トラブル改善の有効な手段ですが、注意点もあります。

  • 獣医師の診断と指導は必須: 皮膚トラブルの原因は様々です。まずは動物病院で正確な診断を受け、本当に食事療法が必要なのか、どの療法食が適切なのかを判断してもらうことが最も重要です。自己判断でのフード変更は、症状を悪化させたり、診断を遅らせたりする可能性があります。
  • 徹底した食事管理: 療法食を与えている期間は、他の食べ物を一切与えない「純粋な給与」を徹底する必要があります。一口のおやつが、これまでの努力を無駄にしてしまうこともあります。
  • 効果発現までの期間: 食事療法は、薬のようにすぐに効果が出るわけではありません。除去食試験では8週間以上、皮膚ケア用フードでも数週間〜数ヶ月かかることがあります。根気強く続けることが大切です。
  • 食事だけでは解決しないことも: 皮膚トラブルの原因が食事以外(環境アレルゲン、感染症、ホルモン異常など)にある場合、食事療法だけでは症状は改善しません。多くの場合、食事療法は薬物療法やスキンケアなど、他の治療法と組み合わせて行われます。

まとめ:皮膚トラブルと食事の関係、獣医師にご相談ください

毎日の食事は、愛犬・愛猫の皮膚の健康状態を左右する重要な要素です。特に食物アレルギーが関与している場合、適切な食事管理(食事療法)は治療の根幹となります。

しかし、皮膚トラブルの原因は多岐にわたるため、「皮膚が悪い=アレルギー対応フード」と安易に考えるのは危険です。まずは動物病院でしっかりと診察・検査を受け、原因を特定することが何よりも大切です。

当院では、皮膚科診療において、必要に応じて除去食試験を含む食事療法も積極的に取り入れています。どのフードが愛犬・愛猫に適しているか、どのように進めていけば良いかなど、飼い主様の疑問や不安に寄り添いながら、最適な食事プランをご提案します。皮膚のトラブルと食事について気になることがあれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。

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