急に後ろ足をつかなくなった…それ、「前十字靭帯断裂」かもしれません
「散歩中に急に後ろ足を上げて歩き始めた」
「昨日までは元気だったのに、今日は足をつけたがらない…」
そんな症状が見られたら、前十字靭帯断裂の可能性があります。
犬ではよくみられる整形外科の病気で、放置すると関節の変形が進んでしまうこともあります。
今回は、前十字靭帯断裂についてご紹介します。
前十字靭帯ってどんなもの?
前十字靭帯は、膝関節の中にある靭帯です。
太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぎ、膝が前後にずれたり、ねじれたりしないように支える大切な役割があります。
この靭帯が切れたり傷ついたりすると、膝が不安定になり、痛みや跛行(足をかばって歩くこと)が起こります。
どんな犬がなりやすい?
前十字靭帯断裂は、どの犬種でも起こる可能性がありますが、
- 中高齢の犬
- 肥満傾向の犬
- 活発に運動する犬
で多くみられます。
後発犬種としては、
- ラブラドール・レトリーバー
- ゴールデン・レトリーバー
- ロットワイラー
- ヨークシャ・テリア
などが報告されています。
人ではスポーツ中の大きなケガが原因になることが多い一方、犬では加齢などで靭帯が少しずつ弱くなり、日常生活の中で断裂するケースが多いと考えられています。
どんな症状が出るの?
代表的な症状は
- 急に後ろ足をつけなくなる
- 足を引きずる
- ケンケンをする
などです。
最初は軽い跛行でも、徐々に悪化することがあります。
また、片方を断裂した犬では、数か月~数年以内に反対側の靭帯も断裂するケースが少なくありません。
どうやって診断するの?
症状、歩様検査、視診、触診、レントゲン検査などを行い、総合的に評価し、診断します。
レントゲンでは靭帯そのものは写りませんが、関節液の増加や脛骨が前方へ変位している様子などを確認することができます。

治療方法は?
内科治療
小型犬や高齢犬、
持病などで手術が難しい場合には、
- 運動制限
- 消炎鎮痛剤
- 体重管理
などを行いながら経過をみることもあります。
ただし、内科療法は、小型犬の部分断裂(靭帯の一部のみが損傷している)の場合は効果があることが多いですが、大型犬や完全断裂の場合は効果が期待できないことが多いです。
また、一度切れてしまった靭帯は再生することはありません。
例え症状が消失しても膝の不安定性が改善するわけではないため、関節の変形は手術と比較して進行してしまいます。
外科治療
中型犬・大型犬や活動量の多い犬では、手術が第一選択となることが多いです。
手術によって膝の安定性を回復させることで、痛みの改善や関節の変形を抑えることが期待できます。
代表的な術式には、
- TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)
- 関節外制動術(関節外法)
などがあります。
現在のところ、前十字靭帯の外科療法で一番術後の成績がいいと言われているのはTPLO のため、当院ではTPLO を主に行っています。
↓↓↓TPLOの術後のレントゲン
前十字靭帯断裂は、自然に元通り治る病気ではありません。
放置すると膝の変形(変形性関節症)が進み、慢性的な痛みにつながることがあります。
「少し足をかばっているだけだから様子を見よう」と思わず、後ろ足の跛行に気づいたら、早めに動物病院を受診しましょう。

